テント生活ホームレスの行き場は何処へ
オーストラリアのパースは一般的には、世界から見ても不況の影響は薄いと言われている。それでも、マイニングブームで沸き立っていた頃と比べると明らかに景気が悪くなっている。
私がパースに到来してから年々、ホームレスの数が増えているのを目に見えて感じるようになった。特に、ノースブリッジという繁華街の近くでは多様な人種や年齢の人達が薄汚れた姿で横たわっているのを見るようになった。
私は通学していた時、なるべく歩くことを心がけていたので良くホームレスに声を掛けられてきた。お金が欲しいからくれないか?とか、何か食べ物を恵んでくれないか?とかそういう申し出が多い。いつも心が痛くなるが、なんとか理由をつけて断ってきた。
以前どうしても可哀そうになり少し小銭をあげた事があるが、それ以降誰か見ていたのかホームレスのコミュニティーであの人がくれたとか噂になったのか分からないが、その道を通るたびに様々な人に声を掛けられるようになって困った経験から断る事にした。
信じられない話だけど、足のケガが酷くてバスに乗れないからタクシー代が欲しいと言われて少しお金をあげたらその途端にその人の足取りが軽くなりバーに酒を飲みに行ったのを見てしまった事もある。
簡単に人を信じられない良い例だ。
人に親切にして自分が被害に合ってしまう場合があるかもしれないと思うと簡単に助ける事も出来なくなってしまった。
やはり、ホームレスは国のアンバランスによって生じた社会の問題。
国が社会福祉の一貫として解決策を練っていくものだろう。
心が痛む話だが、到底個人の力だけでどうにかなる話ではない。
コロナウイルスの発生に伴う市中感染がパースでも確認された時、この街中にいるホームレスについて問題になった。やはり衛生状態や健康状態が悪いために感染する確率が高く、一定の場所に居住していないために感染源になりえるという議論が活発になった。
それに加えてパンデミィックによる不況で失業し、以前にも増してホームレスの数が増える事となってしまった。
西オーストラリア政府は一時的にパンパシフィックホテル等に依頼して、彼らを滞在させる事にした。しかし、一旦規制が外れ始めたら彼らはまた今までどうり家を失った状態で放たれることとなってしまった。
最近、引きこもっている私は街の状態がどうなっているかあまり分からないし、主要メディアでの報道がないために彼らのようなホームレスがいったいどうしているのか知らなかった。
しかし最近ABCニュースを見ていたら、以下の報道が目に飛び込んだ。
それで彼らがテント生活を強いられていた事を知った。彼らはフリーマントルの公園でテント生活をしていたが、1月末に州政府に退去を命じられたためその近くのホテルや宿泊施設に身を寄せるようにとのプレッシャーを掛けられたらしい。
パースシティーアパートメントのオーナーである、Kamil さんは3週間以上無料で彼らに部屋を提供してきた。当然、政府からの要望であるので宿泊料を支払ってもらえると思っていたが未だに支払われていないとの事だ。
いったいどういう事だろう?
ここで、州政府と活動家との発言にかなり食い違いが見られている。
西オーストラリア州首相 Mark McGowan氏によれば、これは活動家による支援なので自分達はホテルの予約をしていない。
活動家の代表者はというと、彼らもまた予約していない。
と双方共に予約していないと言う。
しかし、明らかにあらゆる団体が彼らホームレスのためにホテルの予約を行っているという事実。
その名簿の中には州政府の管轄であるDeprtment of Communities(コミュニティー部門)に加え、他政府関係組織も含まれている。それに政府関係者も何度もこのホテルに出向いているという事実があるとの話だ。
このホテルのオーナーは未だに料金が支払われておらずA$37,000(日本円で300万以上)も自腹を切って彼らを泊めた計算になるらしい。
何とも、おかしな話だ。
親切心から人助けをしている人間が損をする世の中なんて本当に不平等で腹が立つ。
彼は、妊娠中の女性と病気の男性を健康を気遣って泊めてあげた人間のようだ。
観光業は冷え込んでいるのでこのオーナーだって相当経営がきついはずだ。宿泊料を払ってもらえる事を少しでも期待していたのなら本当に気の毒に感じてしまう。
結局、このホテルも支払いがないために彼らホームレスをもう泊めておくことができない。外に出すしかないとの話だ。
西オーストラリア州首相Mark McGowan 氏は相変わらず、詞の朗読や枕詞を多用したような文章を会見で述べるだけで全くこの問題についての解決策を示していない。
「部屋の予約した人は誰でもそのコストを対応する必要がある。」
とか恰好つけて当たり前の事を言うだけ、それってどこが払うのかは宙ぶらりんだ。
テント生活ホームレスの行き場は
いったい何処になってしまうのだろう?
一時的に、何らかの対策を取る。そしてまた元に戻す。
ロックダウンと解放を繰り返すやり方に似ていて気が遠くなる。
結局、何にもしていないのと同じだ。
このまま、シレっと風化させていく作戦なのかな?と思う。
何も根本的部分を変えようとしないで、上っ面を良くしようと宣伝するところは何か日本の政治のやり方によく似ている。
オーストラリアに住んでいるはずなのに、日本の政治に対する期待できんなと感じるあきらめと同じ気持ちが湧きあがってくる。
日本とオーストラリアの政治は結構似ているのかもしれないと今は思える。
それにしても、私自身こうやって政治やそれに関わる人について嘆いたりしたくなるのはまだあきらめていないから何だろうなとも思う。
社会問題はどこの国だってそう簡単に個人で変える事が出来る話じゃないけど、少しでも個々が考えて口に出せば変わる事もあるんじゃないかという期待は持っている。だから、まだ意見を言ったり毒を吐いたりするのは辞めないつもりだ。